年収103万と130万の壁とは?「クリニック経営における税金と社会保険の壁」

クリニック開業成功の方法

昨年から何かと騒がれている、「〇〇の壁」
いろんな壁があり、整理ができていない院長先生も多いのではないでしょうか。
職員から質問されても、的確な回答に困っている先生も多いことでしょう。

スタッフの採用・定着は、クリニック経営において重要な課題です。
特に、パートやアルバイトスタッフの『年収の壁』については、採用面接で必ずと言っていいほど聞かれる質問ではないでしょうか。
しかし、税法と社会保険の制度は複雑で、曖昧なまま答えてしまっているケースも少なくありません。
この記事では、スタッフの年収に関する2つの壁、『税法上の扶養』と『社会保険の扶養』について、その違いと仕組みを院長先生向けに分かりやすく解説します。
スタッフが安心して働ける環境を整えることは、経営の安定にも直結します。
この知識を正しく理解することで、スタッフから信頼されるだけでなく、採用力を高め、ひいてはクリニックの生産性向上に繋がります。

1. 経営者が知るべき「2つの扶養」の基礎知識

税法上の扶養(税金の壁):

目的: 納税者(スタッフの配偶者など)の税負担軽減。

キーワード: 所得控除、配偶者控除・特別控除

年収の壁: 103万円(厳密には合計所得48万円)

経営への影響: スタッフ自身への所得税や住民税の課税に影響します

社会保険の扶養(保険料の壁):

目的: スタッフの配偶者などが、保険料を支払わずに健康保険・年金に加入できる制度。

キーワード: 被扶養者、健康保険、厚生年金

年収の壁: 130万円(年収見込み)

経営への影響: 超過すると、スタッフ自身が社会保険に加入する義務が生じ、クリニック側の社会保険料負担が増加する可能性があります

2. スタッフの働き方とクリニックの負担を分ける「130万円の壁」
なぜ重要か: 年収130万円を超えると、スタッフが国民健康保険・国民年金に切り替えるか、または勤務先の社会保険に加入する(社会保険の加入条件については、また次の機会にお話しします)ことになります。

院長先生への影響: 勤務先の社会保険に加入した場合、事業主としてスタッフの社会保険料の半分を負担する義務が発生します。これは、人件費の計画に大きく影響するため、正確な理解が不可欠です。

非課税収入の注意点: 税法上の所得とは異なり、社会保険の収入には失業手当や障害年金など非課税の収入も含まれるため、スタッフからの質問には注意が必要です。

3. 知っておくべき「106万円の壁」と「扶養内」の新しい常識
パートタイマーの社会保険適用拡大: 従業員数が多い法人(2024年10月から51人以上)の場合、年収約106万円を超えると社会保険加入義務が生じます。

中小クリニックへの影響: 現時点では従業員50人以下のクリニックは適用外ですが、今後の法改正の動向を注視する必要があることを示唆します。

4. 採用と定着に活かす!「壁」を乗り越えるスタッフマネジメント
明確な情報提供: 面接時や入職時に、税法と社会保険の扶養に関する情報を分かりやすく提供することで、スタッフの不安を取り除き、信頼関係を築くことができます。

働き方の柔軟性: 「130万円の壁」を超えても、社会保険に加入することで将来の年金が増えるメリットなどを伝え、長期的なキャリアプランを支援する姿勢を見せることが重要です。

給与シミュレーションの活用: 勤務形態ごとの手取り額のシミュレーションを提示することで、スタッフが安心して働き方を選択できるようなサポートを提案します。

まとめ
税金と社会保険の「扶養」は別物。

130万円の壁は、クリニックの人件費に直接影響する重要なポイント。

スタッフへの正しい情報提供は、採用力と定着率を高める経営戦略です。

貴院では、スタッフの働き方について明確な基準を設けていますか?  この機会に、スタッフ向けの働き方ガイドを作成してみてはいかがでしょうか。

ご不明な点がございましたら、顧問税理士や社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

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