クリニック開業の事業計画で失敗しないために。開業前に押さえたい5つの重要ポイント

クリニック開業を考え始めたとき、多くの先生がまず気にされるのは「どこで開業するか」「どのくらい患者さんが来るか」「必要な資金はいくらか」といった点ではないでしょうか。
もちろん、どれも大切なことです。しかし、実際に開業準備を進める中で私がもっとも重要だと感じているのが、事業計画のつくり方です。
今回は、開業コンサルタントの立場でお話しさせて頂きます。
開業の相談は
開業は、思いだけでは進みません。「よい診療をしたい」「地域に必要とされるクリニックをつくりたい」という志があっても、資金計画や経営計画に無理があると、開業後の運営は想像以上に苦しくなります。反対に、開業当初の患者数が想定より少なくても、事業計画がしっかりしていれば、落ち着いて軌道修正することができます。
クリニック開業の成否は、開業前の事業計画で大きく左右される。
20年以上にわたって医師の開業支援に携わってきた経験から、これは確信を持って言えることです。
特に重要なのは、「見た目のよい数字」ではなく、実際に回る計画になっているかという視点です。事業計画は金融機関に提出するためだけの資料ではありません。開業後に院長先生ご自身が慌てず経営していくための、いわば「設計図」です。
ここでは、これからクリニック開業を考えている先生方に向けて、事業計画をつくる際に必ず押さえていただきたい5つのポイントをお伝えします。
1.開業当初は利益よりキャッシュフローを重視する
事業計画というと、「売上はいくらになるか」「利益はどのくらい出るか」に目が向きがちです。しかし、クリニック開業の初期段階では、それ以上に大切なのが**キャッシュフロー(お金の出入り)**です。
開業前後には、物件取得費・内装工事費・医療機器導入費・電子カルテなどのシステム費用・採用費・広告宣伝費など、まとまった支出が集中します。一方で、患者数はすぐに安定するとは限りません。さらに保険診療では入金までに時間差があるため、「診療はしているのに、手元にお金が入ってこない」という時期が生じます。
損益計算上では黒字の見込みであっても、実際の資金繰りが苦しくなる——これは決して珍しいことではありません。
開業当初に見るべきは、「利益が出るか」だけではなく、毎月どれだけお金が入り、どれだけ出ていき、月末にいくら残るのかです。事業計画では、利益計画の前に資金繰り表と月次キャッシュフローをしっかり確認することが不可欠です。
資金が尽きないこと。それが開業初期の最優先事項です。
2.年単位ではなく、月単位で事業計画を見る
「年間売上」「年間利益」だけで事業計画を考えてしまうケースがよくあります。しかし、実際のクリニック経営は月単位で動いています。経営が苦しくなるのも、資金が足りなくなるのも、1年が終わったタイミングではなく、ある月に突然訪れるものです。
開業後しばらくは患者数が伸びない月もあれば、祝日や大型連休で診療日数が減る月もあります。想定以上の採用費や広告費がかかることもあるでしょう。年間で見れば問題ないように見えても、月次で見ると大きな差が出ることはよくあることです。
事業計画は、必ず月別で作成することが必要です。開業1か月目・3か月目・6か月目・12か月目と、月ごとの売上見込み・経費・借入返済・資金残高まで見えるようにしておくことで、リスクの高い時期が具体的に把握できます。
年単位の数字は全体像の把握には便利ですが、実務上は不十分です。月ごとの数字を常に把握しておくことが、開業後の安定した資金繰りの基本となります。
3.月の診療日数を現実的に設計する
売上予測を立てる際、「1日あたりの患者数 × 診療単価」で計算するのは基本的な考え方です。ただ、その前提として非常に重要なのが、月に何日診療するかという設計です。
月25日診療する前提で計画を立てていても、実際には祝日・学会参加・院長先生のご事情・スタッフ体制の問題などで、診療日数が想定より少なくなることがあります。そうなれば、売上は必然的に下振れします。
一方で、「数字を合わせたい」という理由から診療日数を詰め込みすぎると、院長先生ご自身やスタッフの疲弊を招き、長く続けられない体制になりかねません。
大切なのは「何日開ければ数字が合うか」ではなく、無理なく継続できる診療体制かどうかです。開業当初は患者の流れ・スタッフの習熟度・業務の安定度など、読みにくい要素が多くあります。だからこそ、やや保守的なくらいの設計が現実的です。
月ごとの診療日数・半日診療の有無・祝日が多い月の影響などを丁寧に反映させることで、事業計画の精度は大きく高まります。数字を合わせるのではなく、実際の運営イメージから積み上げることが重要です。
4.生活費を含めた運転資金を見込む
開業時の資金計画で見落とされやすいのが、院長先生ご自身とご家族の生活費です。
運転資金というと、家賃・人件費・医療材料費・広告費など、事業に直接かかるお金を想定しがちです。しかし開業後の一定期間は、院長先生の個人収入が勤務医時代を下回ることも珍しくありません。それでも、住宅ローン・教育費・保険料・日々の生活費は変わらず続きます。
事業資金だけを見て計画を立てると、家計が苦しくなり、それが経営判断にも影響してきます。「本来なら採用や広告に投資すべき場面で、手元資金への不安から動けない」——そうした状況は、実際によく起こります。
開業準備の段階で、事業の運転資金と生活費の両方を見込んだ資金計画をつくることが必要です。
「いつ黒字になるか」だけではなく、「そこに至るまで何か月持ちこたえられるか」。この視点が、安定した開業スタートを支えます。余裕のある運転資金は、安心の源であると同時に、経営判断の自由度を高める土台でもあります。
5.金融機関が納得できる「説明可能な」事業計画にする
クリニック開業では多くの場合、金融機関からの融資を活用します。そのため事業計画は、自分の中で納得しているだけでは不十分です。第三者である金融機関に、根拠をもって説明できる内容でなければなりません。
金融機関が重視するのは、派手な売上予測ではありません。「その数字に根拠があるか」「返済可能な計画になっているか」——この2点です。具体的には、想定患者数に無理はないか・診療単価の設定は妥当か・診療日数の見込みは現実的か・借入返済を含めても資金繰りが成り立つか、といった点が細かく確認されます。
事業計画は数字の一覧表ではなく、数字の根拠を説明するための資料です。自己資金の状況・初期投資の妥当性・運転資金の考え方・院長先生のご経験と計画との整合性——これらが丁寧に整理されていると、融資審査においても信頼を得やすくなります。
強気すぎる売上計画や根拠の薄い収支予測は、かえって不信感につながります。よく見せることではなく、現実的で、説明しやすく、返済の見通しが立つ計画にすること。これが金融機関との信頼関係を築く第一歩です。
まとめ
クリニック開業を成功に導くには、よい物件を選ぶことや医療機器を整えることと同じくらい、事業計画を丁寧につくることが重要です。
本記事でお伝えした5つのポイントを、改めて整理します。
- 開業当初は利益よりキャッシュフローを重視する
- 年単位ではなく月単位で事業計画を見る
- 月の診療日数を現実的に設計する
- 生活費を含めた運転資金を見込む
- 金融機関が納得できる説明可能な計画にする
事業計画は、提出するためだけの書類ではありません。開業後の不安を減らし、安定したスタートを切るための設計図です。「数字が合う計画」ではなく、「本当に回る計画」かどうか——ぜひその視点で、今一度見直してみてください。
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