2025年の年末調整はクリニックの実務が大きく変わる|院長が今すぐ準備すべき対応ポイントを専門家が徹底解説

年末調整

2025年(令和7年)の年末調整は、前年までとは大きく異なる制度下で行われます。基礎控除や給与所得控除の拡大、「103万円の壁」の実質的な移動、扶養控除等の所得要件緩和、さらには「特定親族特別控除」の新設など、多数の改正が一度に適用されるため、医療機関での実務にも相応の影響が生じます。

特にクリニックでは、パート比率の高さ、学生アルバイトの在籍、シフト制勤務による年収コントロールの必要性といった業種特有の事情が重なり、今回の改正が院長や事務担当者の負担を大きくしてしまう可能性があります。

この記事では、クリニックに特化した労務コンサルティングの視点から、2025年の年末調整の変更点と実務での留意点、さらに院長が今から準備しておくべき対応策を体系的に整理します。クリニックの経営と労務リスクの両面を守るため、ぜひ最後までご確認ください。


1.2025年の年末調整は「院長の負担に直結する改正」である

2025年12月に実施する年末調整から、以下の大きな変更が適用されます。

  • 基礎控除額の拡大・段階式への変更
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ
  • 扶養控除・配偶者控除等の所得要件緩和
  • 「特定親族特別控除」の新設(19〜23歳の大学生等が対象)
  • 扶養控除申告書の大幅な様式変更
  • 各種区分(源泉控除対象親族等)の見直し

さらに重要なのは、**「制度変更は年末調整時(2025年12月)のみで行い、11月までの月次源泉徴収は従来ルールで行う」**という点です。

つまり、年末に”旧制度で徴収した税額”と”新制度による本来税額”を一括で精算する必要があるため、12月の実務負担は例年以上に増大します。

医療機関ではレセプト業務、インフルエンザ等の季節要因、スタッフの有給消化など、12月は繁忙期にあたるため、今回の改正の影響は非常に大きいと言えます。


2.改正のポイントとクリニックでの影響

ここからは、制度変更の内容をクリニック特有の実務へ落とし込んで解説します。

(1)基礎控除・給与所得控除の見直し

基礎控除は最大95万円へ拡大し、給与所得控除も最低55万円から65万円へ引き上げられます。この結果、職員によっては手取り額が増減し、それに伴う問い合わせが院長や事務担当者へ寄せられやすくなります。

院長へ直接「税金が増えた/減ったのはなぜですか?」と質問されるケースが増えるため、事前説明の準備が必要です。

(2)”103万円の壁”が”123万・160万円”へ実務的に移動

今回の改正でもっともクリニックへ影響するのが、この「壁の移動」です。

【従来】
年収103万円を超えると、原則として扶養から外れる

【2025年以降】
年収123万円まで扶養内となる層が拡大し、世帯状況により160万円まで扶養内となるケースも存在

クリニックではパート職員が多く、その多くが「扶養内で働きたい」というニーズを持っています。そのため、次のような質問が急増します。

  • 「私はあと何時間働けますか?」
  • 「160万円の人と123万円の人の違いは?」
  • 「年末のシフト調整はどうしたらいいですか?」

特に、シフト制で柔軟に勤務時間を調整できる医療機関では、院長の説明力不足が労務トラブル・不信感へつながりやすい点が大きなリスクです。

(3)大学生スタッフへの「特定親族特別控除」の新設

19〜23歳の大学生などを対象に、新たに「特定親族特別控除」が設けられます。クリニックでは受付・助手・看護助手などに大学生アルバイトが多いため、この影響は無視できません。

この制度は非常に複雑で、本人の収入、親の収入、控除の段階式が絡み合うため、「親の扶養を外れない範囲で働きたい」という相談が多発します。

医療事務では判断が難しく、最終的に院長へ相談が集中する構造になりやすい点に留意が必要です。

(4)扶養控除申告書の全面的な様式変更

2025年からは、扶養控除申告書で新しい概念が導入されます。

  • 源泉控除対象親族
  • 同一生計配偶者
  • 所得基準の選択項目 など

書類そのものの形式が変わり、記入欄も複雑化するため、書き間違い・記載漏れが例年以上に増加することが予想されます。

ミスが起きると、年明けに「還付額が少ない」「税額が違う」といった問い合わせが発生し、診療や経営判断の妨げになる可能性があります。


3.2025年12月は”新制度×1年分の精算”で負担が最大化する

医療機関の12月は以下のように業務量がピークを迎えます。

  • インフルエンザ患者・急患対応
  • レセプト請求
  • スタッフの有給消化
  • 医薬品・消耗品の棚卸し
  • 年末の予約集中

ここに、新制度による年末調整(職員ごとの個別説明・書類チェック・再計算)が加わるため、院長と事務スタッフの負担は過去最大になる可能性があります。

特に、シフト制の調整や収入と社会保険の”二重の壁”の説明が重なると、短期間で混乱が広がることが容易に想像できます。


4.院長が今すぐ準備すべき6つの対策

制度改正そのものよりも、「現場にどんな影響が出るか」を予測し、早期に対策を打つことが重要です。以下では、クリニックが年末に混乱しないための6つの実務対応を提示します。

(1)パートの”働ける上限”を123万・160万仕様で再設計

職員の世帯構成によって適切な上限が異なるため、院内のルールとして説明できる基準を事前に作っておく必要があります。

(2)スタッフ向けの説明資料(院内ガイド)を整備

103万円から123万/160万円になる背景、自分がどの区分に属するかの判断ロジック、社会保険の壁(106万・130万)との違いなどを整理しておくことで、質問の大半を事前に解消できます。

(3)2025年版の扶養控除申告書の書き方マニュアルを作る

書類が変わる年は、ミスが爆発的に増えます。クリニックではこれが翌月の給与計算や年末調整に大きく影響します。

(4)給与ソフト・レセコン連携の設定確認とテスト計算

メーカーごとに対応時期や設定内容が異なるため、早期確認が必要です。特に特定親族特別控除の反映有無を確認しておくと安全です。

(5)就業規則・シフト方針の全体見直し

パート職員の年収基準が変わることで、遅刻控除、短時間勤務のルール、年末繁忙期の加算などの規程と整合性がとれなくなる場合があります。

(6)年末調整担当者への教育・業務分担の明確化

12月に一気に作業が集中するため、事務担当者の負担を平準化する体制を整えることが重要です。


5.専門家が関与するメリット|院長が”説明役”にならなくて済む体制を作る

2025年の改正は、単なる税制変更にとどまらず、スタッフの働き方、院内コミュニケーション、シフト設計にまで影響が及ぶ点が特徴です。

クリニック特化の労務顧問が関与することで、次のような効果が得られます。

  • スタッフごとの「働ける上限」を個別に設計
  • 扶養控除申告書の内容チェック・ミス防止
  • スタッフからの質問に専門家が一次対応
  • 給与ソフト・計算ロジックの事前点検
  • 社会保険の壁との一体管理
  • 就業規則やシフト方針と改正内容の整合性を確保

これにより、院長が煩雑な説明やトラブル対応に追われることなく、本来の業務である診療・経営判断に集中できる環境が整います。


6.まとめ|2025年の年末調整は”過去最大級の実務変更”。

2025年の年末調整は、制度変更が多岐にわたること、医療機関はスタッフ構成が複雑であること、12月の繁忙期と重なることという理由から、クリニックに非常に大きな影響があります。

今回の改正は「年末になってから対応する」では間に合いません。今から準備することで、職員の混乱・ミス・クレーム・離職リスクを大幅に減らすことができます。


クリニック院長の皆さまへ:当事務所では年末調整・労務対応を包括的にサポートします

SHIN社会保険労務士・行政書士事務所では、クリニックに特化した労務顧問として、以下のサポートを提供しています。

  • パート職員の働ける上限の個別設計
  • スタッフ向け説明資料・院内研修
  • 扶養控除申告書の作成支援・内容チェック
  • 年末調整の計算補助・トラブル防止
  • 給与ソフト設定の点検
  • シフト設計・就業規則との整合性整理
  • 院長への負担集中を防ぐ一次窓口対応

まずは無料相談をご活用ください。
貴院の状況を丁寧にヒアリングし、最適な対応をご提案いたします。

2025年の年末調整を”安心して迎えられる体制づくり”を、ぜひご一緒にサポートさせていただきます。

 

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