2026年診療報酬改定でクリニック経営はどう変わるのか

― 外来依存モデルの限界と、いま院長が始めるべき5つの経営改革 ―

■はじめに:2026年は「経営体質」が問われる年

2026年診療報酬改定が近づくにつれ、多くの院長から
「以前より利益が残りにくい」
「スタッフの給与を上げたいのに、経営に余裕がない」
「患者数は大きく減っていないのに資金繰りが苦しい」
といったご相談が増えています。

病院の約半数が赤字というニュースばかりが注目されますが、
実はクリニック(診療所)にも同じ波が確実に迫っています。

その背景には以下の構造変化があります。

  • 診療報酬は伸びないのに、物価・光熱費・人件費は上昇

  • 高齢者負担増 → 受診控えが進む

  • リフィル処方箋の普及 → 来院頻度の減少

  • 財務省の「外来の報酬適正化」圧力

  • 外来中心モデルの限界が見え始めている

つまり、これからの時代は
“医療の質だけでは生き残れない” のが現実です。

クリニック経営には、
医療・労務・財務・マーケティングの総合戦略が必要になります。

以下では、当事務所が実際にクリニック顧問として支援している内容から、
2026年に向けた「5つの実務的な経営改革」 を体系的に解説します。


■1. 2026年診療報酬改定がクリニックの転換点となる理由


「外来の収益確保が年々難しくなっている」
これは全国のクリニックに共通する傾向です。

その理由を整理すると次の4つになります。

① 診療報酬の伸びより、物価・人件費の上昇の方が速い

医療事務・看護師の採用単価は上昇し、
最低賃金も毎年引き上げられています。

ところが診療報酬は横ばい。
この差が経営を圧迫します。

② 高齢者負担増 → 受診控えの加速

政府は持続可能な医療制度のために
「高齢者負担率の見直し」を進めています。

結果として、慢性疾患患者の通院頻度は確実に低下します。

③ リフィル処方箋などによる来院頻度の低下

忙しい患者ほどリフィルに流れます。
これはクリニックの外来収入に直結します。

④ 外来包括化・加算見直しの議論

財務省が毎年求めている
「外来管理加算の見直し」「包括払いへの移行」
診療所にとって無視できないテーマです。

つまり、
外来×回転数中心の経営モデルは、2026年以降さらに不利になる。


■2. 経営体質の強化|クリニックが今すぐ取り組むべき5本柱


ここからは、当事務所が実際に支援する際にも採用している
「クリニック経営の5本柱」 を紹介します。


① 収益構造の見直し(保険診療への依存度を下げる)


収益の多様化は、最も優先度の高い経営課題です。

一気に大きなことを始める必要はありません。
クリニックと相性の良い領域から始めます。

  • 健診(特定健診・自費健診)

  • ワクチン(定期・任意)

  • 自由診療(AGA、ピル、美容、ダイエット、睡眠相談など)

  • オンライン相談

  • 予防医療・生活指導プログラム

外来が減っても売上が維持できる “複線化” が鍵になります。


② コスト構造の改善(固定費の最適化)


クリニックは、意外なほど「見直せる固定費」が多い業態です。

  • 卸との見積もり再交渉

  • 在庫管理のシステム化

  • 光熱費(LED化・空調更新など)の最適化

  • レセプト業務の効率化

  • 行政手続きのオンライン化

月3〜5万円の固定費改善でも、
年間では数十万円の利益改善になります。

「節約」ではなく、“経営設計型コストダウン” が重要です。


③ 患者体験(UX)の再設計


受診控えの時代に必要なのは、
「選ばれる理由」を持つクリニックです。

  • オンライン予約

  • オンライン問診

  • 丁寧でわかりやすい説明

  • LINEによるフォローアップ

  • Google口コミの管理

  • 院内動線の改善

「医療の質 × 患者体験」で選ばれる時代。
患者体験は、実は最も再来率に影響します。


④ スタッフ処遇と働き方改革(採用難時代の人材戦略)


働き方改革の圧力が強まる中、
スタッフの管理は院長の大きな負担になっています。

特に重要なのが以下の3点です。

  • 処遇改善(給与以外の満足を増やす)

  • 業務の標準化・マニュアル化

  • 外部専門家(社労士・事務長)との連携

スタッフが辞めるクリニックの多くは、
“評価制度が曖昧”
“業務の属人化”
“院長に相談しにくい”
という特徴があります。

クリニックの安定経営は、
「院長+スタッフのチーム経営」 に移行することが必須です。


⑤ 小規模クリニックこそ効果が出るDX(デジタル化)


大規模なDXは不要です。
クリニックに合う“小さなDX”を積み重ねるだけで十分です。

▼導入しやすく、効果の出やすいDX

  1. オンライン予約

  2. オンライン問診

  3. 勤怠・シフトのクラウド化

  4. 在庫管理のシステム化

  5. LINE公式アカウント×ステップ配信

これにより、

  • 電話が減り、ストレスが軽くなる

  • ミスが減る

  • スタッフの満足度が上がる

  • 患者の満足度が上がる

  • 院長の負担が激減する

“DX=省力化 × 安定経営” を実現する最短ルートです。


■3. 2026年に向けて注目すべき「患者行動の変化」


今後、患者の行動は大きく変わります。

  • 通院頻度が減る

  • 急性期より、慢性フォローが中心化

  • スマホ予約が当たり前

  • 口コミを見てクリニックを選ぶ

  • LINEなどデジタル接点の重要性が増大

この流れを踏まえ、
「クリニック側から患者とつながり続ける仕組み」 が必要です。

  • フォローアップメッセージ

  • 健診のリマインド

  • 治療継続のお知らせ

  • シンプルな院内説明資料

医療の質を支える「仕組み」を整えることが、
離脱防止にもつながります。


■4. まとめ|2026年改定は“クリニック経営を進化させるチャンス”

2026年の診療報酬改定は、
クリニックにとって大きな試練に見えるかもしれません。

しかし、実際には
「経営を進化させるきっかけ」 でもあります。

本記事で紹介した5つの改革は、
規模の大小に関係なく、どのクリニックにも効果があります。


【クリニックが取り組むべき5つの柱】

  1. 収益の複線化

  2. コスト構造の最適化

  3. 患者体験(UX)の再設計

  4. スタッフ処遇・人材戦略の強化

  5. 小さなDXの導入


2026年を迎える時、
この5つに取り組んでいるクリニックは、
むしろ利益率が改善し、安定した経営に近づいていきます。

「うちの場合、どこから始めればいいか知りたい」
「収益改善とスタッフ管理を同時に進めたい」
「診療所のDXを最小コストでスタートしたい」

そのようなご相談は、当事務所がもっとも得意とする領域です。

医療・労務・行政手続き・経営のすべてをワンストップで支援し、
院長の経営負担を大幅に軽くすること。

それが、当事務所の変わらない使命です。

お気軽にお問い合わせください。
2026年を、「恐れる年」ではなく、
クリニックが一段アップデートする年にしていきましょう。

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