【衝撃の業際問題】税理士が逮捕!無資格で社労士業務を行い報酬400万円の疑い—「無償独占」と「有償独占」が士業の未来を分ける

税理士社労士

はじめに:衝撃のニュースと「業際」問題の再燃

士業界をざわつかせたニュースが報じられた。
税理士法人の代表とスタッフが、社会保険労務士(社労士)資格を持たないまま労働保険関連の手続きを行い、報酬を得ていた疑いで逮捕されたのである。
これまで「偽税理士」の摘発はあったが、社労士会の通報を契機に税理士が逮捕されたのは極めて異例。
税理士会と社労士会の「業際」問題が、再び表面化している。

本稿では、事件の背景と法的な境界線、そして実際の現場で横行する“グレーな無資格業務”の実態について掘り下げていく。


1. 事件の全容:逮捕された理由と400万円の報酬

逮捕されたのは大阪市の税理士法人代表と行政書士資格を持つスタッフ。
2022年4月から2024年8月までの約2年半にわたり、労働保険料申告書や還付請求書を無資格で作成・提出し、報酬約400万円を得ていたとされる。
きっかけは大阪府社会保険労務士会からの情報提供。
背景には、顧問先から「ついでに労務関係もやっておいて」と依頼され、安易に応じてしまったケースが考えられる。
中小企業やクリニックでは、税理士・行政書士・社労士の業務範囲が明確に区別されず、“なんとなく全部お願いしている”状態が多く見られる。


2. 独占業務の法的な境界線:「無償独占」と「有償独占」の違い

士業の根幹は、独占業務の考え方にある。
税理士と社労士では、その適用が大きく異なる。

  • 税理士の業務:無償独占
     税理士法は、報酬の有無にかかわらず、税務代理・税務書類作成・税務相談を資格者に限定している。
     たとえ無償であっても、他人の確定申告を代行すれば違法となる。

  • 社労士の業務:有償独占
     社労士法第2条では、「報酬を得て他人の依頼により労働・社会保険諸法令に関する書類を作成・提出すること」を独占業務と定義。
     無償で行う場合は例外があるが、報酬を受け取れば確実に違法だ。

ここで注意すべきなのが、「就業規則」や「労務台帳(賃金台帳・出勤簿)」の扱いである。
就業規則の内容助言や原案作成は資格がなくても可能だが、最終版の作成および労基署への届出は社労士の独占業務となる。

また、賃金台帳や出勤簿などの作成・管理代行も、労働基準法に基づく労務管理行為であり、実質的に社労士の専門分野に属する。
ところが現場では、税理士事務所や経営コンサルタントが「給与計算の延長」としてこれらを扱っているケースが非常に多い。
その多くが資格者の監督なしに行われており、**“無資格業務の温床”**となっているのが実情だ。


3. 現場の実態:クリニックは「無法地帯」に近い

特に医療・介護業界では、労務管理の複雑さにもかかわらず、税理士が「給与計算から労務相談まで」一括で請け負うケースが少なくない。
経営者側も「税理士先生がやってくれているから安心」と誤信しがちだ。
しかし実際には、社会保険手続きや台帳管理は社労士の独占業務に該当する可能性が高く、刑事罰のリスクを伴う行為だ。

さらに悪質なケースでは、資格のない経営コンサルタントが「就業規則を丸ごと作ります」「助成金も申請します」と謳い、報酬を受け取っている例もある。
こうした“資格なき労務代行”が蔓延しているのが、クリニック業界の現状である。
この“無法地帯”を放置すれば、最終的に損をするのは経営者自身だ。誤った手続きや不適切な就業規則は、労務トラブルや行政指導の引き金になりかねない。


4. まとめ:無資格リスク回避と「専門チーム化」の重要性

今回の逮捕劇は、「善意のついで仕事」が重大な法令違反につながることを改めて示した。
報酬を得て他人の労務書類を扱うなら、それは社労士資格が必要な“独占業務”である。
クリニック経営者は、業務を依頼する際に**「誰が資格を持っているのか」**を明確に確認すべきだ。

そして士業側も、「うちは全部できます」と曖昧に請け負うのではなく、税・法務・労務のチーム連携を構築することが求められている。
社労士、税理士、行政書士がそれぞれの専門性を尊重し補い合うことで、ようやく“合法で安全な経営支援”が実現する。
この事件を、士業業界全体が原点に立ち返る契機とすべきだろう。

クリニックの健全経営の為にも、社労士の存在は重要です。

当事務所は、クリニックに特化した社労士・行政書士事務所です。

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